どこかからか、低く響く音が聞こえてきた。

「何の音だ、これ？」
「ああ、…除夜の鐘だろ。下のテレビじゃねえか？」

　俺の髪を撫でながら、ガデスはあまり興味がなさそうに呟いた。

「ジョヤ…？」
「……たしか、日本の風習だかなんだかで、一二月三一日に鐘を鳴らすことで煩悩を祓う…だったか。前に仁がどうこう言ってたような」
「ふーん……」

　教会の鐘みたいなものか。
　その割には音が単調で、複数の鐘をいっぺんに鳴らせる教会のようにうるさくなくて心地いい。

「一回だけ見たことあっけど、こう…中にハンマーのあるベルタイプじゃなくてな」

　ガデスの指が宙に鐘の形を描いていく。

（ガデスって、指の形きれいだよな…ていうか、かっこいい……）

「丸太みたいなでけえ棒で、外側から人間が叩くんだ」

　そのとき俺が想像したのは実際のものとは大きく違っていたけど、見てみたい、と思った。それがガデスにも伝わったのか、宙を走っていた形のいい指が不意に俺の頬に触れた。

（これが、俺の内に入って……）

「来年、見に行ってみるか？」

　その指がもたらす快感を思い出し思わず赤面したが、部屋のライトを落としていたおかげでガデスにはばれなかったみたいだ。
　ただ、唐突に聞かれたせいで、一瞬ガデスがなにを言っているのかわからなかった。

「え？」

　赤くなった顔をごまかすようにあげた、その額に口唇が降りてくる。
　軽々と躰をひっくり返され、あっという間にガデスに組み敷かれていた。

「いや、もう今年か……」

　顎をさすり、皮肉っぽく言ったガデスの視線の先には、サイドテーブルに置いてある小さな時計。一二時をほんの数分過ぎている。
　……年が明けたんだ……。
　濃い茶の瞳が俺を見下ろしにやりと笑った。

「行くか？　今年の年末」
「うん……」

　ガデスの首に腕を回し抱きしめる。
　音を立てて口吻を交わし、すでに硬くなっているガデスを受け止める。
　さっきまでので十分潤っている俺のそこは苦もなくガデスの進入を受け入れ、すぐに思考が麻痺するほどの快感を与えてくれる。

「ガデス……」

　動きにあわせて波のように快感がおそってくる。
　たまらず漏れた声を吸い取るようなキスをされた。

　Happy New Yearガデス。
　来年も、その次の年も、ずっとずっと……おまえと一緒に年を重ねていけることを、俺は願うよ…。